プロフィール
1965年、茨城県生まれ。法政大学卒業後、小中学校の教員を経て、茨城県教育財団の調査研究員として埋蔵文化財の発掘調査に従事。
その後、民間の遺跡発掘調査研究所で経営などを学んだ後、2010年に独立して関東文化財振興会を設立。
埋蔵文化財の発掘調査や整理業務などを行う。現在は「日本考古学協会」と「日本メタバース協会」に所属している。
→ 関東文化財振興会株式会社
私の道しるべ
私の道しるべは、「いつも前を向いて生きる」です。前を向くとは、過去にとらわれないことです。そして、目の前の物ごとに真正面から向き合うことでもあります。後ろを向いていると過去にとらわれてしまったり、目の前のことから逃げてしまったりしますが、前を向いていれば前にしか転びませんし、転がってきたチャンスを拾えます。後ろを向いている人間を誰も助けてはくれませんが、前を向いていれば必ず周りが助けてくれます。前を向きつづけるのは非常に大変で、向かい風にも立ち向かわなくてはなりませんが、そこで逃げず、やっぱり前を向く。人生は、その一点だと思っています。
遺跡と歩んだ人生
私たちは、埋蔵文化財の発掘・保護・修復・復元をしている企業です。文化財には地上文化財と埋蔵文化財があり、私たちは埋蔵文化財、いわゆる遺跡の発掘調査をしています。ある土地に建物を建てるときや道路を走らせるときには、埋蔵文化財保護法にのっとって地下に遺跡があるか調べるのですが、そこに遺跡があった場合は、国、都道府県、民間から私たちのような団体に声がかかります。私たちは民間企業ですが、主に茨城県教育財団埋蔵文化財部で長年調査をしていた人、つまり、長年公的機関に携わってきたメンバーで構成されています。しかし、それだけではなく、大学で考古学を学んでいた人、学んではいないものの考古学が大好きな人もいます。
私が考古学に興味をもったのは、育った家の周辺に縄文遺跡がたくさんあったためです。小学校の授業では、バケツいっぱいに土器の破片や土偶を採取しました。予想外にたくさん採れるのが面白く、気づいたらどんどんのめり込んでいました。偶然、中学校でも高校でも歴史に詳しい先生に教わったことで、歴史を調べる面白さに目覚めました。大学時代も遺跡を掘った土を運ぶアルバイトをしたり、考古学に詳しい友人と出会ったりしたことで、自然とこの道に進んでいました。考古学から離れようとすると、なぜかまた引き戻される出会いがあり、不思議です。
大学では社会学を学び、卒業後は教員になりました。私が出会ってきた先生たちのように、子どもたちの好奇心を育てられる人材になりたいと思ったのです。あるとき、教員から県の歴史研究員に出向する道があることを知り、試験を受けることにしました。狭き門で、3回目でようやく受かりました。その後、会社を立ち上げましたが、そうかと言って、いきなり独立できる世界ではなく、当時の私には経営の知識もありません。まず民間の研究所で4年間働き、茨城県以外の遺跡の知識も広げながら独立の準備をしました。
考古学で子どもたちに夢を
2010年に今の会社を設立したものの、その直後に発生した東日本大震災の影響で、しばらくは以前の研究所の手伝いをさせてもらっていました。仕事はなかなか入ってこないだろうと思っていたのですが、半年ほどで仕事が舞い込んできました。私たちは茨城県初の民間発掘会社だったので、県内の有力者の方々が盛り上げようとしてくれたのです。茨城放送が破格の料金でCMを流してくれたり、様々な企業が無償で力を貸してくれたりして、本当にありがたかった。その後も、復興関係で宮城県に発掘に行かせてもらうなど、途切れることなく仕事が入ってきて、徐々に会社が大きくなっていきました。
今注力しているのは、従業員が安心して暮らせる環境づくりです。発掘事業の収入はアップダウンが激しいので、インド料理店やドラッグスーパーも経営して、収入を安定させています。もっと福利厚生を充実させて、皆に喜んでもらえる職場にしていきたいです。そして、考古学を学んでいる学生の受け皿にもなりたいと思っています。考古学を学ぶ学生の就職先は、博物館や市町村の文化財担当、学校の社会科の教員くらいしかなく、就職先は多くありません。就職浪人をする人が多いのです。私たちは考古学のプロとしてやっているので、決して甘くはなく、はじめは泣きながらやる人もいるくらいですが、やる気のある人はぜひ来てほしい。考古学を学んでいない人でも、熱意さえあれば大歓迎です。
これからは、もっと世の中に考古学や遺跡の面白さを広めていきたい。私たちの発掘で明らかになった昔話を、絵本にするのもいいでしょう。子どもたちが考古学に興味を持って、自分たちが昔の人たちとつながっていることを実感してほしい。それと、遺跡の発掘だけでなく、保護にも尽力していきたいと思っています。その資金を集める手段として、メタバースに注目しています。遺跡の保護活動には、世界遺産条約の締約国に課される義務的分担金だけでなく、国家予算も組み入れなければ不可能なため、とくに発展途上国は消極的にならざるを得ません。そこで、遺跡保護活動を進めるにあたっては、新たな経済的付加価値である「過去(遺跡)と未来(メタバース)との共存社会の創造」を柱にし、国家が企業から資金を集め、「経済を活性化できる遺跡」にチェンジする必要があると思っています。その詳細については、英文のコンテンツですが私たちのホームページで紹介しているので、ご覧いただければと思います。